
日本のラグジュアリーについて考える(1) 伝統工芸の現在 個人的考察
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日本の伝統工芸は、そのマーケットが十分なものであるかどうかは議論の余地があるにしても、根強い人気があると思います。安い大量生産品が出回る時代でも、工芸品の質の高さに疑いを持つ人は少ないでしょうし、高価なものでも日常的に使いたいと購入される方はたくさんいます。一方で、後継者問題が起こるのですから、良い働き口として認識されていないのは確かです。賃金や搾取という内部問題の可能性もありますが、やはりそれだけ商品が売れない、という事実は認めざるを得ないでしょう。
世界での認知度はどうでしょうか。知っている人々の間ではグローバルにも非常に評価は高いと思います。ただ、ヨーロッパでギャラリーなどを巡ってみたのですが、年代物でない限りあまり需要はないようでした。また一般の高級品売り場で日本の漆器や陶器、家具などを見ることは非常に稀です。海外のガラス製品、食器、家具などが日本の百貨店で大きなスペースを占めているのとは全く対照的です。日本でさえ、陶器売り場は西洋の陶磁器売り場より小さいのが現状です。グローバル市場におけるプレゼンスはかなり低い、というのが現状ではないかと個人的には思います。
日本へ来て、日本の工芸品を買ってくださる海外の方は多いでしょう。京都市内の工芸のお店に行くと海外のお客様がほとんど、ということも多々あります。最近京都でも工芸品のお店が増えたな、と中へ入って話を聞くと、やはりインバウンドのお客様をターゲットにしているところも多いです。これからさらに縮んでいく国内市場を考えると、海外での売り上げを高めることは伝統工芸の未来、という認識は結構あるのではないかと思います。その過程で、伝統工芸品がラグジュアリーという文脈で触れられることも多くなってきたように思います。