西陣極細織　額装　歌川広重「三条大橋」（東海道五十三次）

たった10ヶ月という活動期に145点余りの役者絵などを世に出して、その後忽然と歴史から姿を消した謎の絵師「東洲斎写楽」の作品、というだけでも興味を掻き立てられますが、作品自体の個性と力強さ、ユニークさも際立っています。

「恋女房染分手綱」で大金を奪おうとする江戸兵衛を演じる三世大谷鬼次を描いた大首絵は、今にも襲い掛かりそうな緊張感に満ちた、力強い作品です。

背景には雲母引と呼ばれる技法が用いられており、貝殻などを挽いて粉状にしたものを膠に混ぜて描かれています。西陣織の技師はこれを経糸に青銅箔、緯糸に2色のグレーを使って、年数を経た風合いまで見事に表現しています。

13色の糸が使われ、隣り合う色、重なり合う色の変化でさらに多彩な色彩が表現されています。のっぺりとしがちな白塗りの顔に立体感を与えるために、糸の太さを変えるなど工夫が凝らされており、髪や輪郭などの線も、糸ではなく織り方の違いで強弱が表現されています。

サイズ：H. 約71.0cm   W. 約41.0cm   D. 約3.5cm