西陣織の歴史(6)産業革命の時代

18世紀半ば以降、ヨーロッパでは産業革命が始まり、社会が劇的に変貌しました。織物産業がこの変革の出発点となったのは、衣服の必要性と織物業の歴史の長さを考えると自然な流れだったのかもしれません。飛び杼の発明により、シャトル操作が簡略化され、生産規模が劇的に拡大。これに伴い糸の需要が急増し、機械式紡績機の登場を促しました。これまでの長い歴史のなかで、すべて手作業で行われていた時間のかかる作業が、すべて機械によって行われるようになったのですから、これらの発明がどれほど画期的だったか想像に難くないでしょう。

しかし、高級絹織物の分野では、産業革命の影響は緩やかでした。繊細な材料や複雑な生産工程が、機械化を遅らせる一因となっていたのです。19世紀中ごろにフィラチュア(糸引き機)が登場し、ようやく機械化が進み始めました。

一方、日本では明治維新以降、近代化が国策として推進されました。独立を維持するためには西洋諸国に追いつく必要があるとの認識から、工業化が国家的な課題とされ、製糸産業は特に重視されました。その象徴的な例が、官営富岡製糸工場の設立です。こうした政府の支援により、日本の織物産業は近代化の一歩を踏み出しました。

 

富岡製糸場HPより

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